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2017年7月定例会報告

2017年7月定例会報告(講師・高尾友喜氏)

2017年7月定例会
日時:2017年7月11日(火)19:00~21:00
場所:中央区八重洲2-6-21 三徳八重洲ビルB1F
タイトル:「マッチングサイトの運用について」
講師:高尾友喜氏(スペースマーケット社)

ハートストック研究会7/11定例会のまとめ

 7/11定例会では、スペースマーケットの高尾友喜さんに講演頂きました。スペースマーケット社は2014年設立の会社で、業務内容は下記の3業態です。
・サイトの運営(短期で貸したい人と借りたい人を結び付ける)
・イベントの代理店
・プロモーション支援事業(特定の商品を使ってもらったり、食べたり飲んだりしてもらう)
 社長の重松さんはNTT出身で40歳代。他の幹部も40歳代という若い会社です。一番の主力は、「スペースマーケット」というマッチングサイトの運営です。報酬は貸し手から30%、借り手から5%のフィーを取っています。
 下記にご講演の内容をまとめました。
・利用目的は、1番がパーティーで35%、2番が会議で22%、3番がイベントで16%、4番が写真撮影で12%(半分が個人のコスプレ撮影)。10名以下のパーティーが一番多く、誕生日会、女子会、ママ友会として多く使われている。法人の会議利用も多く、法人の場合は利用単価が高い。
・利用エリアは少し前のデータだが、東京83%、神奈川8%(ほとんど横浜、川崎、鎌倉)。ただ会社の発展とともに、最近は福岡、大阪、名古屋でも利用客は増えている。東京では、渋谷区、港区、豊島区で約50%。これに世田谷区、新宿区、中央区を加えると75%のシェアになる。
・利用施設は、使われていない時間帯(アイドルタイム)の有効利用が多い。平日の結婚式場、一般家庭での使っていない部屋、土日のセミナールーム、船(1週間くらいただ停泊していることが多い)、空家、古民家、廃校、公共施設・公共スペース等。川崎の取り壊し予定の廃墟ビルをサイトに載せたら結構有名になり、解体しないで現在もそのまま使われている。
・阿佐ヶ谷の古民家asagoroは人気で月に60万円から80万円稼いでいる。企業の会議利用が多い。特にベンチャー系、IT系のアイデア勝負の会社は積極的に利用してくれている。会社の近場で場所を変えて、アイデアが湧いてくる空間として利用している。
・埼玉のお寺さん(道往寺)は檀家が減って収入が減少、お寺のお堂をスペース貸しで稼いでいる。現在スペースマーケットでは約1万件の掲載、エアビーは約5万室とまだまだ敵わない。お寺で新年会という企画も結構人気がある。廃校を使ってコスプレ撮影もすごいブーム。奈良や埼玉県横瀬町で廃校が使える。映画館を使ってプレゼン大会も多く行われている。廃墟ビルで企業のパーティーというのも多い。どうせ取り壊すのならと、壁を壊したり、大胆な色を塗ったりと異空間として人気がある。
・昔は公民館等でママ会をやっていたのだろうが、これが今は当社サイトの空き部屋で行われている。普通のカフェだとベビーカーが邪魔になるが、空き部屋でやれば邪魔にならずお母さんたちも居心地が良い。ただ机と椅子を置けばよいということではなく、インスタグラムでカワイイ写真が撮れるようなインスタ映えする内装でなければ支持されない。綱島の1階が賃料10万円で空いていて困っていたが、これをパーティー部屋として運営したところコンスタントに15万円の手取り収入がある。御宿のゴルフ場ではキャンプできるようにしたところ人気が出た。
・イベント事業では、学生向けのイベントや、ビジネスセミナーをプロデュースしている。某企業の会長がプール付き豪邸を貸してくれるが、ここは人気がある。表参道裏の空き店舗にカフェブランドのポップアップを行ってプロモーションを行った。廃墟ビルでラグジュアリーブランドであるモエ・エネシーのPRを行ったところ好評だった。
・自治体ともタイアップしている。自治体も立派な古民家があるのに活用に困っている。長崎県島原市では島原城を使えるようにしてくれた。本当は宿泊で事業化したかったが宿泊はできなかったので、お城そばでグランピングできるようにした。「島原の乱」と名打ったところ、忍者の格好をした100人のコスプレイヤーが集まった。そのうち半分が島原市民だったので、地方でもコスプレイヤー潜在数の多さを知ることができた。日南市では市長室を貸してもらえる。埼玉県横瀬町では町議会議場を借りられる。まだ成約していないがロケに使える。
・横須賀市の小島の猿島で、2年前の冬にコスプレイベントを開催、100人くらいが集まった。コスプレイヤーは普段お金を切り詰めて、コスプレにはパッとお金を使ってくれる。
・メディアに取り上げられたのは幾つかある。部屋の中で桜の花見ができる「花見部屋」は人気が出た。部屋の中なので雨の心配もなく、寒さもない。豪華に桜を飾らなくても、花見の一輪挿しでも見栄えがする。特ダネでは、古民家再生を取り上げてくれた。父親が持て余していた古民家を息子がスペースマーケットに掲載したところ、月額60万円くらい稼ぐようになった。「闇女子会」という言葉もある。エアビーやスペースマーケットで乗っている部屋で女子会を行うこと。男性からするとお店ではないのでどこで女子会が行われているか分からない。ここでもインスタ映えする部屋が人気。
・今後はワンストップのイベントプロデュースを目指したい。どこかでイベントがしたいと思ってくれる人が、自分たちのサイトを見てくれれば、場所、食事、内装、音楽、パフォーマンスなどすべて揃えられるようにしたい。
・「プライムシェフ」というサイトがあり、スマホでシェフを予約できる。シェフが食材を持参して出張してくれる。ケータリングではなくその場でプロのシェフが料理を作って食べることができる。大体一人6000円の費用。今までのお店での利用は、食事もお酒も音楽も自分好みではなく、すべてお店に決められた内容。シェフを呼べれば飲食店に行かないで自分たちの好みでプロデュースすることができる。
・運用事例としては、京王線上北沢駅徒歩3分の築40年のビル。募集賃料11万円の事務所をスペースマーケット社でDIYで内装を変えた。キッチンを設置し、押入れに黒板塗料を塗り、チョークでデザイン。今は月20万円くらい売り上げている。利用者の満足度は高い。最初は安い利用料でどんどん使ってもらって、レビューを書いてもらう。レビューが溜まっていくと上位に検索されるようになり、利用頻度も上昇していく。25歳くらいの女性が一人で料理をするために使うということもあった。
・桜上水fika(築30年の一戸建て)では50万円くらいかけて内装を行った。オーナーから問い合わせがあり、スペースマーケットが面白そうなのでやりたいと問い合わせがあった。キッチン付きレンタルスペースが人気がある。
・来年4月に民泊新法が施行予定。これが施行されると民泊利用が大きく増える。但し新法は年間180日までしか民泊に利用できない。残りの185日をどうするか。これをスペースマーケットのサイトで運用してもらえれば、二毛作の利用ができる。民泊半分と、宿泊以外の場所貸し。
・高田馬場のワンルームで月5万円から10万円稼いでいる。大塚のゲストハウス(ドミトリー形式宿舎)でも、1階のオープンスペースをスペースマーケットで稼ぎ出した。月額50万円くらい売り上げがある。池尻セレクトハウスでも月50万円くらい稼ぐ。三軒茶屋居抜き店舗でも寿司職人を呼んでパーティーを開いたりしている。西馬込に「猫のいるマンション」というのがある。築50年のマンションで、普通のその風景がロケなどに使われている。その間居住者の高齢の女性は四畳半で待機している。ロケなどで使ってもらうことが楽しいと言ってくれている。代々木公園のマンションに住んでいる独身サラリーマンは、イベントスペースとして自宅を貸している。通常月で40万円、12月には80万円を稼いだ。スペースマーケット用に内装を変えて人気が出るようにしている。
下記は会員の皆様からでた質問とその応答です。
Q1.清掃費用は
 スペースマーケット社は関わらない。オーナー負担が原則。ただ利用者に自分たちできれいにして返すのが原則と説明すると、ほとんどの人がきれいに掃除して返してくれる。
Q2.利用者の会員登録は
 厳密なところまでは行っていない。クレジットカード決済ができる人というのが原則。事前決済なのでノーショウ、とりっぱぐれはない。
Q3.利用料金は
 時間あたり3000円くらいが標準。
Q4.管理はどうしているか
 鍵はキーボックスにいれるという原始的手法。今後はスマートロックを導入しようと考えている。民泊新法施行後は、プロの方が多くなり大きな変化がきあると予想している。ゴミは原則持ち帰り。残していく場合は有料で引き取る。残しておく場合は1か所にまとめておいてもらい、貸し手、もしくは委託を受けた人が処理している。
Q5.トラブル、物品の破損
 月に3000件くらいの利用があるが、何か壊れたと貸し手からクレームが来るのが10件程度。基本は貸し手に壊されるようなものはおかないで欲しいと頼んでいる。赤ワインをこぼされて部屋が汚れたという例もある。
 騒音でのトラブルもなくはない。ほとんどは大騒ぎすることはないが、渋谷など若い人が集まるところだと騒音で利用をやめてしまったところもある。
Q6.ネット環境、豪華設備
 ほとんどネットに関しては要望ない。プロジェクターなども会議等であれば要望あるが、パーティー系だとほとんど言われない。テレビも見ない人も多い。
Q7.古民家の利用
 23区内が人気がある。町田、鎌倉あたりの古民家の稼働率も良い。リゾート地の古民家に東京からパーティーに行くという需要は少ない。逆に地元民が使うという感じ。
以  上 
文責:田中祥司

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2017年5月定例会報告(講師・牧野知宏氏)

2017年5月定例会報告(講師・牧野知宏氏)

2017年5月定例会
日時:2017年5月9日(火)19:00~21:00
場所:中央区八重洲2-6-21 三徳八重洲ビルB1F
タイトル:「住宅市場をめぐる複合的な要因」
講師:牧野知宏氏(オラガ総研)

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研究会報告(田中祥司)

 オラガ総研牧野知宏様に講師となって頂き、5/9に定例会を行いました。大変分かり易く、また勉強になる話を聞くことができました。生産年齢人口の減少、高齢化進行、共働き世帯の増加、都心部でのタワーマンションの大量供給、そういう要因が複合化して住宅市況に多大な影響を与えています。講演内容を下記にまとめてみます。

① 首都圏分譲マンションの動向
JR駅前マンションとタワーマンションは売行き好調である。最近の高額販売事例としては、目黒駅前の東京都バス操車場跡地の再開発である「ブリリアタワーズ目黒」。平均分譲単価600万円/坪(周辺相場400万円/坪)で即完だった。「プラウドタワー立川」も駅前、タワーマンションだが、平均分譲単価340万円/坪(周辺相場250万円/坪)。
 今やタワーマンションは全く珍しくなく、コモディティ化している。2004年~2016年の13年間で、首都圏では573棟、戸数でも17万戸超のタワーマンション供給があった。
 首都圏分譲マンションの販売価格も2012年4,540万円/戸だったのが、2016年5,490万円/戸となり、ここ5年で約2割上昇している。価格が上昇した一番の理由は、建築費の上昇である。2012年の分譲マンション土地建物価格按分は、土地30、建物70。これが2016年度では土地34.5、建物91。建築費が3割上昇しているのに対し、土地は1割強の上昇。タワーマンションの建築費が4、5年前100万円/坪だったのが、今では150万円/坪くらいになっている。
 首都圏分譲マンションの供給戸数は、2013年度5.8万戸だったのが、2016年度は3.57万戸と減少。2009年度以来の4万戸割れとなった。

② リゾートマンションの暴落
 価格が付かない不動産も増えている。不動産をもじって、「負動産」と造語を作ったらマスコミが一気に飛びついた。平成バブル時代に大量供給された越後湯沢のリゾートマンションは1戸10万円。但し安くても飛びついてはいけない。管理費、固定資産税などで年間の負担額が60万円位掛かってしまう。親から相続を受けた人も全く使わないので管理費を支払っていない人も多い。滞納管理費の割合は3割を超えている。大浴場などの付帯施設も多く今後多額の修繕費用が掛かるのだが、修繕積立金は全く足りていない。

③ 続々現れている1000万円以下の激安不動産
 昭和40年代から都心から遠く離れたところや、バス便エリアで大量供給された開発団地が今一気に暴落している。都心までの通勤時間が1時間半掛かる西多摩地区の中古戸建住宅は1000万円を切る物も出てきている。松戸市で駅から徒歩20分掛かる中古マンションは200万円、300万円と言う物もある。埼玉県の小川町、東松山では新築当時4000万円で分譲したマンションも大体同じくらいの価格になっている。

④ 空き家率、高齢者世帯比率
 一方、貸家着工数だけは対前年で+10%と大幅に伸びている。目先の節税対策であり、将来の需要動向を見極めたものとは言えない。最近、持ち家を担保としたリバースモゲージを銀行は勧めているが、担保価値の下落を見込んでいない。郊外型住宅地の価格下落が大きい現在、不良債権の山となる可能性は非常に高い。
 日本全体の空き家総数は800万戸の大台に乗った。空き家率では13.5%。東京は空き家率が低いと思うかも知れないが、現実には10.9%もある。それよりも空き家の数が東京には81.7万戸もあることに驚かされる。ヨーロッパの主要都市の空き家率は数パーセントであり、日本は非常に高い空き家率になっている。
 都内の空き家の2/3は賃貸用マンションであり、63%を占める。個人が所有している戸建、マンションの空き家は平成20年度調査時で18.9万戸ある。
 高齢者(65歳以上)の比率は千葉県、神奈川県でも急激に上がっている。1995年は65歳以上が10%前後だったのが、2015年で25%前後、2040年では35%を超えると予測されている。
 西日本では概ね先に高齢化社会が到来しており、これからは比較的緩やかにしか増えない。病院のベッド数を考えると高齢者が亡くなってベッドが空くことが予測されるので、病院ベッド数が極端に足らないと言うことにはならない。
 これが東日本では一気に高齢化が進むので、病院のベッド数は全く足りないと言う時代がもうすぐ到来する。この対策は現時点できていない。

⑤ 郊外型バス便住宅団地の暴落
横浜の港南台駅からバス便の庄戸の住宅団地(1,200世帯の開発団地、昭和40年代から50年代にかけて三井不動産が供給)や京急・金沢文庫駅バス便の釜利谷の住宅団地は、バブルの頃は土地70坪に建物付で1.5億円くらいで売られていた。今売ろうとしたら3000万円はおろか、2000万円でもなかなか売れない。庄戸には不動産のプロだった三井不動産OBも大勢住んでいるが、彼らも現在の本当の価格を知るとあまりの下落にショックを受ける。
子供たちも住むのに不便なので、相続で受けたがらない。空家を相続で保有した場合、何だかんだ年間100万円くらい管理費で掛かってしまう。親の相続があった場合に昔は誰が所有不動産を貰うかで揉めたが、今では親の住宅を誰が引き取るかで揉めている。
30年前、40年前に買った人たちが住み続け、新しい若い住人の流入がないので、一人住まい(男は早く死ぬので基本はお婆ちゃん)か、空家というのが4割くらいになっている。郊外型開発団地ではここ15年で人口は大きく減少し、庄戸の団地では20%、釜利谷の団地では15%減った。しかしそれ以上に問題になっているのは働き手の世代(生産年齢人口)が年々減少していること。40歳台、50歳台の世帯がいなくなり、結果子供もいなくなり、小学校、中学校の廃校が相次いでいる。
横須賀では空家率が40%を超えた。空家率が30%を超えると急速に治安が悪化すると言われている。地元選出の小泉進次郎氏もこのままでは横須賀が消滅してしまうと危機感を抱いている。

⑥ 生産年齢人口の減少
 生産年齢人口(15歳~65歳)は、1996年が8700万人でピークだったが、毎年100万人づつ減少が続いている。現在の夫婦共働き世帯は62%(専業主婦世帯が38%)。生産年齢人口がピークだった1996年はこの割合がきれいに反対だった(2/3は専業主婦で、1/3が共働き)。共働き世帯では交通が便利なところでないとやっていけない。通勤に時間が掛かる郊外の住宅地ではなく、都心に近い住宅地のマンションを選ぶ傾向にある。
 1996年に大都市法が改正され、都心部の容積率が大幅に増加された。また円高が急激に進み、日本では労働費が高すぎてやっていけなくなった工場がアジアに転居し、工場用地が多数売りに出された。これら要因により一気に東京近郊で分譲マンションが大量供給された。郊外住宅地で育った人たちも、都心に近い分譲マンションを求めて販売も捗った。

⑦ 郊外型住宅団地の下落する要因
 郊外型ニュータウン(今となってはオールドタウン)で下記事項に当てはまれば、価格が暴落することになる。
・東京までの通勤時間が1時間以上
・1970年~1980年に開発
・駅からバス便
・丘陵地で傾斜がきつい
・近隣に観光地などの人が集まる場所がない
・地域内に目ぼしい産業が無い

⑧ タワーマンションの危険性
タワーマンションは今では全く珍しいものではなくなり、2004年~2016年の13年間では、全体の26%、17万戸強がタワマンとなっている。コモディティ化している。
超高層マンションの設備は滅茶苦茶高額。エレベーター1基が1億円する。非常用電源設備も1億円する。普通のマンションのエレベーターがプリウスとすればタワマンのエレベーターはポルシェと言える。これを将来の大規模修繕時に更新する場合に、巨額の修繕費を賄えるのか。ブランド住宅地で資産家が住んでいるマンションであれば出せるかも知れないが、そうでない住宅地のタワマンだと修繕できないケースが相当出てくるはず。ちなみに非常用電源設備は高額なくせに、いざ動かしてみると30分で停止してしまうものも多い。設備としてあるからと言って、非常時には安心とはならない。
高層部は主に投資で買っている人が多く、低層部は居住と言う実需で買っている人が多い。外国人が投資で買っているケースも多く、基本日常の管理に関心は無い。中国人投資家が半分以上分譲マンションを買った事案では、管理組合総会で「何故、日本語で総会を行うのか。権利者が半分以上を占める中国人のために中国語で総会を行うべきではないか。」という提案がなされた。これも理屈から言えば正しいとも言える。

⑨ 価格が維持できる数少ない住宅地とは
 今後の住宅地の価格で、高値で安定しているのは「ブランド化された住宅地」、「人の流入・流出が多い住宅地」と考えられる。例えば川崎市は毎年10万人が転入し、同じくらいが転出していく。福岡市も同じような動き。このような新陳代謝がある都市は魅力的であり、価格も下落しにくい。しかしこのような都市は少数であり、資産として価値を維持できる物件は少数であると言わざるを得ない。

⑩ 海外の住宅ローンで利益を出す地銀
 土地担保主義で融資を行っていた銀行には今後益々つらい状況になる。それでも元気な地銀は幾つかある。これら元気な地銀は国内で融資を行うのではなく、東南アジアなどの現地金融機関とタイアップし、海外で個人向け住宅ローンを出している。
以 上 
文責 田中祥司
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2017年3月定例会報告(講師・細井保裕氏)

2017年3月定例会報告(講師・細井保裕氏)

2017年3月定例会
日時:2017年3月14日(火)19:00~21:00
場所:中央区八重洲2-6-21 三徳八重洲ビルB1F
講師:細井保裕氏(ニッチリッチ社・社長)
タイトル:「インバウンド顧客の動向」

研究会報告(田中祥司)

ハートストック研究会の3月14日定例会では、上野でインバウンド客が多数宿泊するホテル「ステイト」を運営しているニッチリッチ細井社長が講師役となり、インバウンド顧客の動向、ホステル(ドミトリー形式の低価格宿)の厳しい状況等の貴重なお話をして頂きました。

1.フェリーで訪れるインバンド客
日本政府観光局(JNTO)発表数値に、ホテル業界には何か違和感があった。 2016年度は2400万人達成と言いながら、ホテル業界は宿泊者増加を実感できていない。
宿泊者数が増えていない原因としては、民泊客の増加が一番だろう。その他に
フェリーで来るインバンド客の数え方に問題があることが分かった。最初に那覇港に訪れ、翌日は福岡港、3日目に神戸港に行った船があると、それぞれの寄港地で来日外国人として数える。上記例で言えば一人の外国人が3回日本を訪れたことになり、3000人の乗船であれば9000人カウントされることになる。全員船に宿泊するのでホテル業者には全く恩恵を与えない。爆買いも最近はしないから、寄港地に経済効果を与えていない。
2016年度だけでフェリーで立ち寄ったインバウンド数が8割増の200万人くらいでカウントされている。しかし、宿泊も食事代も伸びないから、フェリー客が増えてもあまり意味がない。

2.急激に増えたホステル(ドミトリー形式の低価格宿)の厳しい状況
本来低価格で宿泊できるホステル(2段ベッドのドミトリー形式、別名ではゲストハウス)に関し、新規参入者の間違った認識がある。訪日外国人の大半は、旅行初心者のアジア人であり、旅慣れた欧米人と違って旅行先で知らない人とワイワイ仲良くすることを望んでいない。「Youは何しに日本へ」の影響で欧米人が大勢来ているように勘違いしがちだが、欧米人インバウンド客の数は少ない。
 LCC片道1万円でやってきて、2000円台で宿泊出来て安いからホステルに宿泊する。それなのにカフェだ、デザインだと金を掛け過ぎて、それを回収するために4500円の料金設定になってしまう。しかしその価格設定では宿泊者を集められず軒並み2000円前後まで下がっているのが今の現状。
 その点、昔から低価格ホステル業を経営しているカオサン、サクラホテル等は初期投資を最小限に抑えた上手な経営をしている。カオサンに行くと不統一な家具がリビングに並んでいるが、廃業した喫茶店からタダで貰ってきて置いている。二段ベッドやちょっとした収納は手作りでコスト削減している。昔からやっているホステル業はこれが当たり前だった。
 サンケイビルがUDSと組んで秋葉原、東日本橋で展開しているホステル「グリッズ」も概ね2000円くらいしか取れていない。1階にカフェを設け内装費で坪100万円を掛けてもこの結果。「いろり」を展開するアールプロジェクトも2000円台の価格まで下がっている。宿泊者を取るために朝食無料を付けるなど悪循環に陥っている。
 ファーストキャビンも積極的展開をしているが、普通のホテルの価格が安くなり普通に泊まれるようになると、今までのような料金体系ではやっていけなくなる。個室ホテルに宿泊できなかったからお客が流れてきていたことにようやく気付いたのではないか。
 京都の普通のホテルの稼働率は依然好調を保っている。しかしホステルだと1000円を切る価格帯の物まで出てきた。
 宿泊業をやったことがない不動産会社にホステル業を勧めたコンサルタントの収支計画は、ほとんど同じ人間が作ったのかと言うくらいによく似た甘い見通しばかり。4500円の単価が取れて、たった3人のスタッフで清掃ができるとなっている。しかし現実は人件費が当初予定の2倍以上かかり、宿泊料金が半値以下となっている。それでいて必要がないカフェを作ってしまう。お金が無くてホステルに宿泊している客が、1杯700円、800円出してカフェに来ると考えること自体が現実を見ていない。
ホステルに投資したファンド、不動産会社はこれから塗炭の苦しみが待っている。安易にホステルの運営を引き受けた運営会社がバンザイをして経営放棄する案件も出つつあり、ババ抜き合戦始まると予想される。
旅行サイトのエクスペディア、ブッキングドットコム等は通常手数料が12%。これを20%の手数料を払うことで自社ホテルをトップ近くに表示することができる。但しこれは麻薬で一度やったら抜け出せなくなる。ホステルでファンドが投資しているところは、稼働率を上げようと客室単価を下げ、フィーを20%支払っている。しかし業界全体が低価格から抜け出せないので赤字体質のまま。
現状言えることは、大部屋のホステルはできるだけ比率を下げ、個室タイプのホテルとして運営するのが一番リスクが少ない。ホテル業を取るためには一人当たり最低面積等が定められており、飲食業施設を儲けるなどハードルは高いが、結果的にはホテル業の方が収益が良い。
2000円を切って宿泊できるようになると、一気に危ない顧客が宿泊しにやってくる。薬のジャンキーや浮浪者的な人たち。宿泊業なので予約を取って来てしまうと断ることができない。自分たちのホテルでも鍵を掛けずに寝ていた男性スタッフが、外国人のゲイ顧客に必要に肉体を迫られたことも起きている。

3.インバウンド顧客の求めるもの
欧米人の求める日本の観光と、大半の顧客であるアジア人の求める観光は大きく違う。これを欧米人とアジア人で一緒くたにしている。欧米人は築地市場のマグロ競りや渋谷スクランブル交差点を見たい(見た後は全然大したことが無いとクレームを言ってくる)。Sumou Trainingを見るのも大好き。ただ傍若無人な観光客が勝手に土俵に載ったりした時間が相次ぎ、最近では県が浮出来る相撲部屋は1部屋だけになってしまった。
最近は下火になったが、歌舞伎町のロボットレストランに行きたいというような体験型が大好き。新宿ゴールデン街は今も人気が高い。SNSにアップして、俺はこんな変わった体験をしているのだと友達に自慢したい。旅行初心者のアジア人はまだそこまで行っていない。
近年のインバンド客の増加は圧倒的に中国、韓国、台湾、香港等のアジア人客の増加によるもの。円安になると途端に客が増加する。東京、大阪などに来る初来日者は一巡したかも知れない。2度目、3度目に来る顧客は都心に泊まらず、地方都市に宿泊する傾向にある。地方空港の外国人利用者は増加傾向にある。
旅行者の中でも、多額のお金を使える層と、できるだけお金を掛けない層と二極化してきている。それぞれの層毎にどういうやり方で喜んでもらうか、ターゲットを絞って考えるべき。高級なホステルを企画するような需要が無い所に資金投資しても仕方がない。
宿泊業でみれば、個室のホテルは依然強い需要があり今後とも堅調である。インバウンド客でみれば、ツインタイプのホテルは圧倒的に強い。
今は旅行初心者が日本に来ているブーム状態なのではと言う不安感が強くある。ブームが去った後にどれだけインバウンド客が来てくれるか非常に心配。30年前、40年前に旅行初心者だった日本人が退去してハワイ、グアムに行ったことを思い出して欲しい。一巡するとグアム、サイパンには日本人観光客が行かなくなってしまった。日本に本当の観光の魅力がないとこうなる恐れは多分にある。

 また、ホテル経営に詳しい参加者の方からは、下記のご指摘もありました。
・今後多数のホテルが開業する大阪ホテルマーケットは非常に厳しい状態になる。以前のような低価格の客室料金に戻ることも可能性として無くはない。
・日本のホテルマーケットは、日本人顧客が今でも8割以上占めているので、今後とも日本人を大切にする経営を目指している会社が多い。APAホテルも南京事件に絡む書籍で中国政府からバッシングを受けているが、日本人顧客からは屈しない態度が支持を受けており以前好調を保っている。いざとなれば5000円の宿泊料金でも利益を出せるので非常に強い経営をしている。
文責 田中祥司


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小泉八雲の物語による防災教育(昭和12年~22年)

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の物語による防災教育

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1896年の明治三陸地震・津波で「村の長者の浜田五兵衛が高台の自分の稲むらに火をつけ、それを消しに駆け付けた村人たちを大津波から救った」という話『A living God』(小泉八雲著・英文)を元にした教材『稲むらの火』が、昭和12年~22年に防災教育に広く使われた。

参考:『天災と日本人』(畑中章宏著)ちくま新書 2017年2月
「稲むらの火」: http://inamuranohi.jp/
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「日本の公共事業」収録論文へのリンク

宮尾尊弘「IoT・ビッグデータ時代における社会資本整備」
(『日本の公共事業』国土交通省編:2016年12月 収録)
“Public Infrastructure Investment in the Age of IoT and Big Data”
リンク:
https://drive.google.com/file/d/0BwdfatMQgtDzY3JaLW1CejBTUTg/
要旨:
社会インフラの整備は、単に物理的な更新や蓄積よりも、「スマート化」つまりIoTやビッグデータを利用して住民と情報交流できるようにすべきで、特に防災と復旧のために重要かつ急務である
Main point: Important and urgent to improve public infrastructure by making it “smart” utilizing IoT and big data for interaction with the public, rather than physically renewing and accumulating it, especially with regard to disasters and resilience.

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